第4回|それでも介護職は「働きやすい・やりがいのある仕事」なのか?
医療・福祉のお仕事相談所の鈴木です。
全5回でお届けしている、令和7年度「介護労働実態調査」から見る介護業界シリーズ。
ここまで、
第1回では「介護業界の人手不足」
第2回では「介護職が辞める理由」
第3回では「介護職の給料」
について見てきました。
人が足りない。
人間関係を理由に辞める人がいる。
仕事内容のわりに給料が低いという不満もある。
ここまで読んでいると、
「介護って、やっぱり大変な仕事なんだな……」
という印象を持つ方もいるかもしれません。
確かに、大変な部分はあります。
私自身も介護職として現場で働いていましたので、介護の仕事を何でもきれいごとで語るつもりはありません。
でも今回の調査を読んでいて、ぜひ紹介したい数字がありました。
それが、
「働きやすさ」と「働きがい」
についての結果です。
実際に介護の仕事をしている人は、自分たちの仕事や職場をどう感じているのでしょうか。
今回はここを、私すずきの経験も交えながら見ていきたいと思います。
介護労働者の67.5%が「働きやすい」
まずは「働きやすさ」から見てみましょう。
令和7年度の調査では、
「今の仕事や職場は働きやすいと思いますか?」
という質問に対して、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人は、
67.5%
でした。
およそ3人に2人です。
さらに、
「今の仕事や職場は働きがいがあると思いますか?」
という質問では、
63.2%
が「そう思う」「ややそう思う」と回答しています。
私はこの数字を見て、
「介護業界のイメージと、実際に働いている人が感じていることには、少し差があるのかもしれないな」
と思いました。
「介護=大変」だけでは説明できない仕事
介護職というと、
「給料が安い」
「腰を痛めそう」
「夜勤が大変」
「人手不足」
「人間関係が大変そう」
など、どうしてもネガティブな話題が目立ちます。
もちろん、そうした課題があるのも事実です。
今回の調査でも、仕事についての悩み・不安・不満として、
「人手が足りない」52.3%
「仕事内容のわりに賃金が低い」38.1%
「昇給がない、少ない」29.9%
「身体的負担が大きい」23.9%
などが挙げられています。
それでも、働きがいを感じている人が63.2%いる。
ここが介護という仕事の面白いところだと、私は思っています。
私すずきも、介護職を経験しているから分かる部分があります
私も以前、特別養護老人ホームで介護職として働いていました。
だから、
「介護はやりがいのある素晴らしい仕事です!」
の一言だけで終わらせたくはありません。
実際、大変です(笑)。
早番もある。
遅番もある。
夜勤もある。
排泄介助も入浴介助もある。
利用者さんの体調が急変することもある。
職員が少ない日に限って色々なことが重なる……。
介護職を経験した方なら、
「あるある」
と思ってもらえる部分もあるのではないでしょうか。
それでも私自身、介護の仕事をやっていて、
「この仕事をやっていて良かったな」
と思う瞬間は何度もありました。
「ありがとう」が直接返ってくる仕事
今回の調査には、
「今の仕事や職場について、どのようなことが当てはまりますか?」
という質問もあります。
そこで最も多かった回答が、
「利用者や家族から感謝される」60.7%
でした。
次いで、
「利用者の援助・支援や生活改善につながる」56.7%
「福祉に貢献できる」38.5%
となっています。
私は、これは介護職という仕事の大きな魅力だと思います。
自分がした仕事に対して、
「ありがとう」
と言ってもらえる。
昨日できなかったことが、今日は少しできた。
食事をあまり食べなかった利用者さんが、自分の声掛けで少し食べてくれた。
ご家族から、
「いつもありがとうございます」
と言ってもらえた。
一つひとつは小さな出来事かもしれません。
でも、
自分の仕事が誰かの生活に直接つながっている
という感覚を持ちやすい仕事だと思います。
給料だけでは説明できない「介護を続ける理由」
今回の調査でもう一つ興味深かったのが、仕事に対する意識です。
「利用者の役に立つ仕事がしたい」
という項目の志向性D.I.は、
+78.6ポイント。
さらに、
「上司や同僚がサポートしてくれる職場で働きたい」
は、
+81.0ポイント
と非常に高くなっています。
ここにも介護職の特徴が表れているように思います。
介護職として働いている人の多くは、
「誰かの役に立ちたい」
という気持ちを持っている。
でも同時に、
「自分一人で頑張りたいわけではない」
んですよね。
周りの職員と協力したい。
困ったときには上司に相談したい。
チームで利用者さんを支えたい。
介護は一人ではできない仕事だからこそ、職場の人間関係やサポート体制が非常に重要なのだと思います。
ただし、ここで気になる数字があります
ここまでは介護業界全体の数字を見てきました。
ところが、職種や働く場所ごとに見ると、かなり違いがあります。
特に私が気になったのが、
訪問介護員と、施設系(入所型)の介護職員の違い
です。
訪問介護員では、
働きやすい 72.7%
働きがいがある 68.3%
となっています。
一方、施設系(入所型)の介護職員では、
働きやすい 54.9%
働きがいがある 48.4%
です。
かなり差がありますよね。
なぜ訪問介護は「働きやすい」と感じる人が多いのか?
ここは今回の調査だけでは、「なぜこの差が生まれたのか」までは断定できません。
なので、ここからは調査結果ではなく、訪問介護の運営にも携わっている私すずきの感覚として読んでください。
訪問介護には、施設介護とは違った特徴があります。
基本的には、利用者さんのお宅へ訪問して、決められた時間の中で一対一の支援を行います。
施設のように、
「こっちでコールが鳴った」
「こちらの利用者さんの食事介助もしないと」
「次は入浴介助」
というように、複数の利用者さんへの対応が同時進行する場面は比較的少なくなります。
一人の利用者さんと向き合える。
自分の生活に合わせて働き方を組み立てられる場合もある。
こうした訪問介護ならではの特徴が、「働きやすさ」につながっている可能性はあると思います。
ただし当然、訪問介護にも大変さがあります。
一人で利用者さん宅へ伺うので、現場で判断を求められることもあります。
移動もあります。
利用者さんとの相性もあります。
ですから、
「訪問介護なら絶対に働きやすい」
という話ではありません。
入所施設の数字が低いことも、私は少し分かる気がします
一方で、施設系(入所型)の介護職員は、
働きやすい54.9%、働きがい48.4%。
今回掲載されている介護職員のサービス系型別では、いずれも低い数字になっています。
私自身、特養で働いていたので、この数字を見て少し考えさせられました。
入所施設では、24時間365日利用者さんの生活を支えます。
早番、日勤、遅番、夜勤。
食事、入浴、排泄。
記録。
コール対応。
利用者さんの急変。
そして限られた人数で、複数の利用者さんを支援しなければなりません。
第1回で紹介したように、介護職員の69.8%が不足していると事業所側が回答しています。
人手不足の状態が続けば、
一人ひとりとゆっくり関わりたい。
もっとこういう介護がしたい。
と思っていても、
「まず今日の業務を回さなければ」
となってしまうこともあると思います。
これは私自身、現場にいた頃にも感じたことがあります。
「介護が嫌い」なのか「今の職場が合わない」のか
転職相談をしていて、私が大切にしていることがあります。
それは、
「介護の仕事そのものが嫌なのか、それとも今の職場が合わないのか」
を一緒に整理することです。
たとえば、
「もう介護は嫌です」
という相談でも、よく話を聞いてみると、
「夜勤がきつい」
「職員が少なすぎる」
「上司と合わない」
「休みが取りづらい」
という話だったりします。
それなら、
介護職を辞めなくても、働く場所を変えることで解決する可能性があります。
特養が合わなかった人が、デイサービスでは楽しく働けるかもしれない。
施設介護が合わなかった人が、訪問介護では力を発揮できるかもしれない。
逆に、一人で訪問するより、施設で仲間と働く方が安心という人もいます。
介護職と一言で言っても、
働き方は本当にいろいろあります。
「働きやすい職場」の答えは人によって違う
ここは転職を考えている方に、ぜひ覚えておいてほしいところです。
「一番働きやすい介護施設はどこですか?」
と聞かれても、私は一つには決められません。
なぜなら、
夜勤をして稼ぎたい人。
日勤だけで働きたい人。
土日は休みたい人。
短時間で働きたい人。
利用者さんとじっくり関わりたい人。
たくさんの職員がいる環境の方が安心な人。
一人で動く方が気楽な人。
それぞれ違うからです。
たとえば訪問介護の72.7%という数字だけを見て、
「じゃあ訪問介護に転職しよう!」
と決める必要はありません。
大切なのは、
「自分にとって何が働きやすいのか?」
を考えることです。
人間関係への満足度は、実は高い
第2回では、
介護関係の仕事を辞めた理由1位が「職場の人間関係に問題があったため」27.3%
という結果を紹介しました。
なので、
「やっぱり介護業界って人間関係が悪いんだ」
と思った方もいるかもしれません。
ところが今回の調査で、現在の仕事の満足度をD.I.値で見ると、
「職場の人間関係」は+38.2ポイント。
「仕事の内容」の+34.2ポイントよりも高くなっています。
一方、
「人員配置体制」▲18.5ポイント
「賃金水準」▲12.3ポイント
などはマイナスです。
ここ、すごく面白いと思いませんか?
人間関係は、辞める大きな理由にもなる。
でも一方では、今の職場に満足する大きな要素にもなっている。
つまり人間関係は、介護職が長く働くうえで非常に大きなポイントなんだと思います。
「管理職になりたい人」は意外と少ない
もう一つ、私が興味深いと思った結果があります。
仕事に関する意識を見ると、
「管理職・リーダーになって部下に指示や指導をする仕事をしたい」
という項目の志向性D.I.は、
▲41.7ポイント。
さらに、
「管理職・リーダーになって大きな判断や責任をとる仕事をしたい」
も、
▲37.5ポイント
でした。
一方で、
「いつまでも現場で専門性を発揮したい」
という考えを持つ人もいます。
これも、介護業界のキャリアを考えるうえで大切なポイントだと思います。
介護職のキャリアアップというと、
介護職
↓
リーダー
↓
主任
↓
管理者
みたいに考えがちです。
でも、
「良い介護職として現場で働き続けたい」
というキャリアがあってもいいと思うんですよね。
管理職になることだけがキャリアアップではありません。
現場で専門性を高める人が、きちんと評価される仕組みも必要だと思います。
私すずきは、介護職は「合う人にはかなり面白い仕事」だと思っています
介護職として働いた経験がある私からすると、
介護という仕事は、
誰にでもおすすめできる楽な仕事
ではありません。
でも、
合う人には、かなり面白い仕事
だと思っています。
人と話すのが好き。
誰かの役に立つことが好き。
ちょっとした変化に気付ける。
人の生活そのものに関わる仕事がしたい。
そんな人には、介護の仕事でしか味わえない面白さがあります。
そして資格や経験を積めば、
特養。
デイサービス。
グループホーム。
有料老人ホーム。
訪問介護。
サービス提供責任者。
相談員。
ケアマネジャー。
など、働き方を変えていくこともできます。
「介護職が合わない」と思ったとき、介護業界そのものを辞める前に、違う働き方を見てみる。
私はそれも一つの選択肢だと思っています。
「介護は大変」だけでは見えないものがある
令和7年度「介護労働実態調査」では、
働きやすい 67.5%
働きがいがある 63.2%
という結果になりました。
もちろん、
「じゃあ介護業界は問題ないですね」
という話ではありません。
人手不足があります。
給与への不満があります。
身体的な負担もあります。
職場によっては人間関係の問題もあります。
それでも実際に働いている人の多くが、働きやすさや働きがいを感じている。
ここもまた、介護現場のリアルなのだと思います。
私は介護の仕事について、
「大変だからやめた方がいい」
とも、
「やりがいがあるから絶対おすすめ」
とも言いたくありません。
大切なのは、
「自分に合った介護の仕事、自分に合った職場を選ぶこと」。
転職相談をしている立場としては、結局ここに行き着きます。
次回はいよいよ最終回。「介護業界のこれから」を考えます
ここまで4回にわたって、
人手不足 → 退職理由 → 給料 → 働きやすさ・働きがい
と見てきました。
では、この人手不足の介護業界は、これからどうなっていくのでしょうか。
今回の調査には、
介護テクノロジー(ICT・介護ロボット)
外国人介護人材
そして、
スポットワーク
についての調査結果も掲載されています。
たとえば、介護テクノロジーについては、導入事業所のうち「効果がある」「やや効果がある」を合わせると、**昼間の業務負担の軽減53.8%、夜間の業務負担の軽減47.2%**という結果が出ています。
また、過去1年間にスポットワークを利用した事業所は8.9%。その利用事業所の28.0%がスポットワーカーを正社員等として雇用した経験があると回答しています。
人が足りないから、ただ求人を出す。
それだけではない時代が、もう始まっているのかもしれません。
次回、
第5回|介護業界はこれからどうなる?ICT・外国人材・スポットワークから考える未来
では、最新の調査結果をもとに、これからの介護現場と介護人材の働き方がどう変わっていくのかを、私すずきなりに考えてシリーズを締めくくりたいと思います。
※本記事の数値は、公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査 結果の概要」をもとにしています。なお、「働きやすい」「働きがいがある」の割合は、「そう思う」と「ややそう思う」の合計です。