第1回|介護業界は本当に人手不足?最新データから見えてきた介護現場のリアル
第1回|介護業界は本当に人手不足?最新データから見えてきた介護現場のリアル
こんにちは。
医療・福祉のお仕事相談所の鈴木です。
介護業界で働いている方なら、
「どこも人が足りない」
「求人を出しても応募が来ない」
「また職員が辞めてしまった……」
こんな話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
私自身、介護職として現場で働き、その後は10年以上、介護・福祉業界を中心に人材紹介や派遣のお仕事に携わってきました。
現在も日々、求職者さんから転職相談を受ける一方で、施設や事業所の採用担当者さんから、
「鈴木さん、誰かいない?」
と相談をいただいています。
そんな私からすると、介護業界の人手不足は今さら驚くような話ではありません。
ただ、
「実際、どのくらい人が足りていないの?」
と聞かれると、感覚だけではなく数字でも見てみたいところです。
そこで今回から全5回にわたって、公益財団法人介護労働安定センターが公表した**令和7年度「介護労働実態調査」**をもとに、介護業界の「今」を見ていきたいと思います。
難しい調査結果をそのまま並べるのではなく、現場経験+人材業界で働いてきた私すずきの目線も交えながら、できるだけ分かりやすくお話しします。
今回は第1回。
テーマはズバリ、
「介護業界って、本当にそんなに人手不足なの?」
です。
介護事業所の65.8%が「人手不足」
まず今回の調査で私が注目した数字がこちら。
従業員が不足していると回答した介護事業所は65.8%。
「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせた割合です。
前年度は65.2%だったため、さらに0.6ポイント上昇しています。
つまり単純に考えれば、
介護事業所のおよそ3社に2社が「人が足りない」と感じている
ということになります。
これだけでもかなり高い数字ですよね。
ただ、私としては、
「まあ、そうだろうな……」
というのが正直な感想です。
日々、施設さんとお話ししていても、
「今すぐじゃなくてもいいから良い人がいたら紹介してほしい」
「夜勤できる人はいませんか?」
「介護福祉士さんだったらぜひ」
というお話は珍しくありません。
実際の現場で感じていることが、今回の調査でも数字として表れているように思います。
特に深刻なのが「訪問介護」
そして、さらに驚く数字があります。
職種別に見ると、訪問介護員が不足していると回答した割合は82.9%。
7職種の中で最も高くなっています。
82.9%ですよ。
10事業所あったら、8事業所以上が人手不足を感じている計算です。
これはかなり深刻です。
ちなみに私自身、現在は訪問介護事業所の運営にも携わっています。
ですから、この数字は人材会社としてだけではなく、訪問介護事業所側としても非常によく分かります。
訪問介護って、
「午前中のこの1時間だけ」
「夕方のこの時間に入ってほしい」
「この曜日に対応できるヘルパーさんが欲しい」
など、単純に職員の「人数」だけ揃えればいいわけではありません。
利用者さんがサービスを必要とする時間と、ヘルパーさんが働ける時間を合わせなければならない。
そのため、
「職員はいるけれど、この時間に入れる人がいない」
ということも起こります。
これは訪問介護ならではの難しさだと、実際に運営していて感じています。
「人が辞めるから人手不足」だけではなさそう
では、介護業界はなぜこれほど人手不足なのでしょうか。
「介護は離職率が高いからでしょ?」
と思う方もいるかもしれません。
ところが今回の調査を見ると、少し違った景色が見えてきます。
訪問介護員と介護職員を合わせた2職種では、
採用率 14.6%
離職率 12.4%
でした。
離職率は前年度から横ばい。
一方、採用率は2年ぶりに上昇しています。
……とはいっても、上昇幅はわずか0.3ポイントです。
介護労働安定センターも、採用率については昨年度に続き低い水準としています。
ここは結構重要だと思っています。
介護業界の人手不足というと、
「人がどんどん辞めてしまう業界」
というイメージを持つ方もいると思います。
もちろん離職対策は重要です。
ただ、今回の数字を見る限り、
「辞める人が多い」という問題だけではなく、「新しく入ってくる人を確保すること自体が難しい」
という問題も考えなければならないと思います。
私すずきも、採用の難しさは年々感じています
ここからは調査結果そのものではなく、私自身の実感です。
10年以上この仕事をしていると、
「昔と同じ求人の出し方をしていれば、人が集まる」
という時代ではなくなったと感じます。
給与だけ出して、
「介護職募集!」
だけでは、なかなか応募につながりません。
求職者さんからも、
「人間関係はどうですか?」
「残業は多くないですか?」
「子どもがいるので休みやすいところがいいです」
「夜勤はできません」
「この時間までなら働けます」
など、給与以外の相談をたくさんいただきます。
実は今回の調査でも、職場定着に効果があった方策として最も高かったのは、**「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」57.9%**でした。
一方、採用面で最も効果があったと回答された方策は、**「賃金水準の向上」38.4%**です。
つまり、
「入ってもらうためには給与も重要。でも、長く働いてもらうためには働きやすさも重要」
ということではないでしょうか。
この辺りは、私が日々求職者さんと話をしていて感じることともかなり近いです。
ちょっと気になる「29歳以下」の離職率
もう一つ、私が気になった数字があります。
29歳以下の離職率は17.3%。
他の年齢階層よりも高く、今回の調査でも若年層の定着が課題とされています。
これは介護業界にとってかなり大きな問題だと思います。
これから介護を必要とする人が増えていく中で、若い世代が介護業界に入ってきても、長く続かなければ人材不足はなかなか解消されません。
ただし、
「若い人はすぐ辞める!」
なんて単純な話にしてしまうのも違うと思っています。
なぜ辞めるのか。
給与なのか。
仕事内容なのか。
人間関係なのか。
将来性なのか。
そこまで考えなければ、本当の意味での人材定着にはつながりません。
人手不足だから「どこでも採用される」とも限らない
ここは転職を考えている方に、私すずきから少しお伝えしておきたいところです。
これだけ介護業界が人手不足なら、
「じゃあ介護ならどこでも簡単に採用されるんじゃない?」
と思うかもしれません。
実際、人材不足で積極的に採用している施設・事業所はたくさんあります。
ただ、
人手不足=誰でもいい
ではありません。
介護経験、資格、勤務できる曜日、勤務時間、夜勤の可否、人柄、これまでの転職歴など、施設によって重視するポイントはかなり違います。
逆に求職者側から見ても、
求人がたくさんある=どこに入っても同じ
ではありません。
給与も違えば、勤務時間も違う。
人員配置も違う。
施設長や管理者の考え方も違う。
そして何より、職場の雰囲気も違います。
だからこそ私は、介護業界が人手不足だからといって、
「とりあえず採用してくれるところに入りましょう」
とはあまりおすすめしたくありません。
人手不足の時代だからこそ「職場選び」は大切です
令和7年度の介護労働実態調査を見ると、介護事業所の65.8%が人手不足を感じています。
訪問介護員にいたっては**82.9%**です。
介護人材の確保が難しい状況は、数字を見ても明らかです。
一方で、私はこれを求職者さん側から見ると、
「自分に合った働き方を考えるチャンスでもある」
と思っています。
夜勤をしてしっかり稼ぎたい。
家庭と両立したい。
資格を活かしたい。
施設介護が好き。
訪問介護をやってみたい。
人によって希望は違って当然です。
人材不足だからこそ、施設側もこれまで以上に**「選んでもらえる職場づくり」**が必要になる。
そして働く側も、
「採用してくれるところ」ではなく「自分が長く働けそうなところ」を選ぶ。
これからは、ますますそんな時代になっていくのではないでしょうか。
次回は「介護職はなぜ辞める?」を見てみます
さて。
今回の記事では、
「介護業界は本当に人手不足なのか?」
を最新の調査から見てきました。
では、次に気になるのは、
「実際に介護職を辞めた人は、なぜ辞めたの?」
というところですよね。
実は令和7年度の調査では、直前の介護関係の仕事を辞めた理由として最も多かったのは、**「職場の人間関係に問題があったため」27.3%**でした。
給料だけではありません。
そして「人間関係」と一言でいっても、その中身を見るとなかなか考えさせられる結果になっています。
第2回|介護職はなぜ辞める?「給料」より多かった退職理由とは
では、この部分を私すずきの経験も交えながら、もう少し掘り下げてみたいと思います。
※本記事の数値は、公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査 結果の概要」をもとにしています。調査結果の詳細は以下の公式資料から確認できます。